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労働災害(労災)コラム

労災の特別支給金について解説|支給要件や申請方法も併せて紹介

更新:2023年10月17日
公開:2023年10月17日
  • 労災
  • 特別支給金
労災の特別支給金について解説|支給要件や申請方法も併せて紹介

通勤時や仕事中にケガまたは病気をし、労災保険を申請した場合、保険給付とは別に、該当する条件に応じて、「特別支給金」というものを上乗せして支給されます。

本コラムでは、特別支給金がどういったものなのか、また、特別支給金の申請の方法・支給される金額などについて、弁護士が解説します。

1、労災の特別支給金とは?

まずは、特別支給金とはどういったものなのか、また、支給されるために必要な要件について解説します。

  1. (1)労災の特別支給金とは何か

    特別支給金は、労働者災害補償保険法29条の「社会復帰促進等事業」の一環として、保険給付に上乗せして支給されます。

    労災保険では、9種類の特別支給金があり、労災による病気やケガなどが一定の条件に該当する場合には、それぞれの状況に応じて、法令で決められた金額の特別支給金を受給することができます。

  2. (2)労災の特別支給金の支給要件

    特別支給金を受給するための要件とは、業務や通勤による傷病の療養のために、労働ができなくなった場合や、障害等級に該当する障害が残った場合などが挙げられます。この要件は、労災保険給付を受給するための要件と同様のため、一つの要件に該当することで、特別支給金と保険給付の両方が同時に支給されます。

    しかし、療養補償給付金や療養給付金など、無料で治療が受けられる給付金だけの場合、特別支給金は受給できないため注意が必要です

  3. (3)特別支給金の性質

    このように、請求書の様式や受給するための要件も、保険給付と同じである特別支給金ですが、特別支給金は、従業員(労働者)の社会復帰のためにという福祉的な性格が強い点に特徴があります。

    労災について会社に安全配慮義務違反や使用者責任等を理由とする損害賠償を請求する場合、同一の費目について損害賠償と労災の給付金を二重に受けることは認められません。
    そのため、損害賠償請求をする場合、すでに労災保険給付として受給した金額は差し引かれます。しかしながら、特別支給金は、福祉のために支給されるものだから差し引かれない、という違いが生じます。

2、特別支給金の種類と受給できる金額

9種類ある特別支給金の種類・受給するための要件・支給額を表で整理しています。
特別支給金も保険給付も、請求しなければ受給することができず(一部、職権で支給が決定されるものもあります)、時効にかかって消滅してしまいますので、請求漏れがないよう、参考にしてください。

名称 受給できる場合 支給額
休業特別支給金 労災により休業した場合
※休業(補償)等給付については、特別加入者の場合、所得喪失の有無にかかわらず、療養のため補償の対象とされている範囲(業務遂行性が認められる範囲)の業務または作業について全部労働不能であることが必要です。
休業4日目以降、1日につき給付基礎日額の20%相当額
障害特別支給金 労災により障害が残った場合 1級 342万円
2級 320万円
3級 300万円
4級 264万円
5級 225万円
6級 192万円
7級 159万円
8級 65万円
9級 50万円
10級 39万円
11級 29万円
12級 20万円
13級 14万円
14級 8万円
障害特別年金 労災により障害等級1~7級の障害が残った場合 1級 313日分
2級 277日分
3級 245日分
4級 213日分
5級 184日分
6級 156日分
7級 131日分
障害特別一時金 労災により障害等級8~14級の障害が残った場合 8級 503日分
9級 391日分
10級 302日分
11級 223日分
12級 156日分
13級 101日分
14級 56日分
遺族特別支給金 労災によって労働者が死亡し、給付を受ける権利を有する遺族が存在する場合 300万円
(遺族特別支給金を受けることができる遺族が2人以上ある場合には、300万円をその人数で除して得た額)
遺族特別年金 労災によって労働者が死亡し、給付を受ける権利を有する遺族が存在する場合に、遺族の数等に応じて支給 1人 153日分
2人 201日分
3人 223日分
4人以上 245日分
遺族特別一時金 労災によって労働者が死亡し、給付を受ける権利を有する遺族が存在する場合に、状況に応じて支給 従業員の死亡当時、遺族(補償)年金の受給権者がいないとき:算定基礎日額の1000日分
遺族(補償)年金の受給者がすべて失権した場合で、それまでに支給された遺族特別年金の合計額が算定基礎日額の1000日分に満たないとき:合計額と算定基礎日額の1000日分との差額が支給
傷病特別支給金 労災によるケガや病気が、療養開始から1年6月経過しても治癒せず、傷病等級に該当する場合 1級 114万円
2級 107万円
3級 100万円
傷病特別年金 労災によるケガや病気が、療養開始から1年6か月経過しても治癒せず、傷病等級に該当する場合に、等級に応じて支給 1級 313日分
2級 277日分
3級 245日分

3、申請方法と、申請してから支給されるまでの期間について

特別支給金を受給するためには、どのような方法で申請するのか、また、どの程度の時間がかかるのかを整理しておきましょう。

  1. (1)申請に必要な書類、提出先、記載内容、申請方法

    特別支給金の申請は、労働基準監督署に請求書を提出して行います。

    請求書は、厚生労働省のホームページから取得できますが、請求する特別支給金や保険給付の種類によって様式が異なりますので、自分の請求に対応するものを確認してからダウンロードしましょう。


    特別支給金の種類 必要な様式
    • 休業特別支給金
    • 休業補償給付支給請求書(様式第8号)
    • 休業給付支給請求書(様式第16号の6)
    • 障害特別支給金
    • 障害特別年金
    • 障害特別一時金
    • 障害補償給付支給請求書(様式第10号)
    • 障害給付支給請求書(様式第16号の7)
    • 遺族特別支給金
    • 遺族特別年金
    • 遺族特別一時金
    • 遺族補償年金支給請求書(様式第12号)
    • 遺族年金支給請求書(様式第16号の8)
    • 遺族補償一時金支給請求書(様式第15号)
    • 遺族一時金支給請求書(様式第16号の9)
    • 傷病特別支給金
    • 傷病特別年金
    • 傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)
  2. (2)申請してから支給されるまでの時間

    特別支給金や保険給付を申請してから支給されるまでの時間は、請求する特別支給金などの種類によって異なります。

    審査にかかる時間の目安は、厚生労働省から次のように公表されています。


    請求する内容 必要な時間
    ケガ・病気の場合 1か月
    休業補償の場合 1か月
    障害が残った場合 3か月
    死亡した場合 4か月

4、労災問題はどこに相談したらいい?

通勤中や仕事中に起こった労災の問題の相談先は以下の通りです。

  1. (1)労働基準監督署に相談

    労災保険を申請する際に困った場合、制度や手続きについては、労働基準監督署に相談するのがベストといえます。労災認定するかどうかを実際に審査するのは労働基準監督署ですので、労働基準監督署の指示に従うのがよいでしょう。

    ただし、先ほど解説したと通り、労災は、保険給付も特別支給金も、「一定の条件」に該当した場合に「一定の金額」を支給する制度です。
    そのため、実際にはその金額以上の損害が発生していたとしても、すべての損害が補償されるわけではなく、補償が不足するケースも少なくありません。

    また、労災の発生について会社に過失があった場合でも、労災では慰謝料は補償されないため、注意が必要です。

  2. (2)弁護士に相談

    安全配慮義務違反や使用者責任など、会社に過失責任を問いたい具体的に以下場合には、弁護士に相談し、会社への損害賠償請求を委任することをおすすめします
    安全配慮義務違反や使用者責任に問える可能性があるのは、以下のようなケースが挙げられます。

    • 同僚による機械の操作ミスなどで労災が発生した場合
    • 長時間労働を強いられ心身に不調をきたした場合
    • 会社がいじめやハラスメントを認識していたにもかかわらず適切な措置を講じていない場合
    など


    弁護士に依頼すれば、会社との交渉はもちろんのこと、交渉で解決しない場合でも、調停・労働審判・訴訟などの法的手続きの代行を委任することもできますので、安心して治療に専念できるでしょう。

    また、弁護士に依頼して会社に損害賠償を請求すれば、労災では補償されない「慰謝料」を請求できますので、会社に損害賠償を請求するケースでは、得られる賠償額が高額になることを期待できるといったメリットもあります。

    労災の補償が不十分な場合や、会社に安全配慮義務違反や使用者責任を理由とする損害賠償を請求したい場合などは、弁護士への相談・依頼をおすすめします

5、まとめ

労災申請の手続きは、自分で行うことが可能ですが、手続きや方法に不明な点や疑問がある場合にも、労働基準監督署に相談すれば正確な情報を得られます。

また、労災の補償が不十分である場合、弁護士に相談することにより、会社に安全配慮義務違反や使用者責任による損害賠償請求を行うことが可能なのか、今後ご自身が取るべき対応が明確になります。

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※記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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